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2011年11月のことば

日本の思想の特徴として、ポジティヴというのがあると思います。前向き、積極的、明るさ、元気といった印象です。もちろん、何かもかもそうだということではなく、ポジティヴな思想が目立つ、という意味です。そして、思想と言うと大げさになりますので、考え方と言った方が適切かもしれません。


 そしてまた、これも一概には言えませんが、昭和の戦争で苦労した人の中に、ポジティヴな思想を感じることが強くあります。ポジティヴというか、スーパーポジティヴとしか言いようがないほど前向きに考えていく人です。客観的に見れば、現代の人間よりはるかに苦労しているのに、思想的に見れば、はるかにポジティヴで、よく不思議に思うことがありました。


 それがなぜなのか、どこまでそう言えるのかは、よくわかりません。ただ思いますのは、深刻な悲しみと自己への信頼と、ニヒリズムとオプティミズム(楽観主義)の入り混じった考え方が、特に庶民層にあって、独特の根強さ、打たれ強さを生み出してきたのではないか、ということです。身近の人たちを見てきて、今にしてそう思いますし、小泉八雲が書き残した昔の日本の庶民の姿にも、それを感じます。もっとよく考えてみたいテーマです。

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