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『文部省の国体明徴政策――思想はどのようにして政策になるのか』を創元社から令和7年2月に刊行した。ここで、その簡単な紹介を行ないたい。

 

 文部省は、国体明徴政策を昭和10年代に推進する。現代風に言えば、「日本の特色ある国家主義」を国民が体現するよう徹底させる政策、と言えるのかもしれない。ただし、そこには普遍主義的な発想はなく、あくまでも日本ナショナリズムの立場に立つものであった。

 

 文部省の主たる管轄分野は教育と研究である。それゆえ文部省は、教育者には「日本的特色のある国家主義」を体現し、それに即した教育を実施して生徒学生にも体現させていくことを求め、研究者には「日本的特色のある国家主義」を体現し、それに即した研究を行っていくことを求めた。ちなみに、昭和10年代半ばには宗教団体にも、「日本的特色のある国家主義」に即した教義が直接求められるようになる。その担当も文部省である。

 

この文部省の政策がどこまで成功したのか、文部省の政策によって成功したのかなどは、判定が難しい問題である。そのため本書では、政策の企画立案に焦点を当て、思想はどのようにして政策になるのか、そこにどのような問題点が存在したのかを集中的に検討した。時期としては昭和10年頃を中心に、会議などで政策が形成される過程を追跡するとともに、当時の文部省への外部評価を手がかりとして、思想上政策上の問題点を特定することを試みている。

 

 とはいえ、文部省の内部事情の多くは不明のままである。また、日本の国体を普遍化する、少なくとも大東共栄圏内の指導原理にするという課題が現実化した昭和10年代後半の政策を検討することは今後の課題となる。このように、不十分な点が多々あるものの、今後の文部省研究、「上からのナショナリズム」の比較研究などに少しでも貢献できれば幸いである。

                                 

               (2025/2/15)  植村和秀 

                                                                         

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